賃金・残業代・退職金などに関する法律

退職金

・退職金請求権が認められるためには、就業規則、労働協約、労働契約などの根拠が必要です。
就業規則、労働協約の定めがなくても、慣行、個別合意、従業員代表との合意などにより定まっていれば、根拠ありといえます。
退職金請求権の消滅時効は5年間です。

退職金の発生根拠

  1. 労基法には退職金請求権を直接根拠づける規定がないので、退職金請求権があるというには、就業規則、労働協約、労働契約などの根拠が必要です。
  2. 就業規則や労働協約などの規定により、退職金の支給基準が明確に定められている場合には、退職金請求権ありことになります。
  3. 就業規則や労働協約などによる定めがない場合でも、慣行、個別合意、従業員代表との合意などにより、支給金額の算定が可能な程度に明確に定めっていれば、労働協約の内容になっていると言えることができ、退職金請求権があることになります。 
《 裁判事例 》
過去の退職者について一定の基準で退職金を支払ってきたという慣行が成立していれば、その慣行に従って退職金支給義務、退職金請求権が認められた。
宍戸商会事件(東京地裁判決昭和48年2月27日労経速807号)
退職金を支給したこともなく、退職金制度はないと従業員に説明していたが、取引先との取引開始に当たって体裁を整えるため作成された退職金規程に基づく退職金請求が認められた。
常磐基礎事件(東京地裁判決昭和61年3月27日労判472号)
実質的には、眠ったままになっていた退職金規程に基づく退職金請求が認められた。 
大洋興業事件(大阪地裁判決昭和58年7月19日労判415号)
取締役ではない会社幹部に対して退職慰労金を支払う旨の社長との合意があり、合意に基づく支払が認容された。
インターナショナル事件(東京地裁判決平成7年2月27日労判676号)
職業安定所における求人票には「退職金有り」の記載があり、求人票記載の労働条件は特段の事情がない限り労働契約の内容になると解すべきとされた。
丸一商店事件(大阪地裁判決平成10年10月30日労判750号)
取締役と従業員を兼務していた者につき、取締役は名目的なものであって、就業規則の退職金規程が適用される従業員にあたるとされた。 
日本情報企画事件(東京地裁判決平成5年9月10日労判643号)

退職金の支払い時期 

  1. 使用者が、就業規則に退職金の支払い時期を定めた場合にそれによります。(労基法第89条)
  2. 退職金の支払い時期について特段の定めがない場合は、権利者(労働者若しくはその遺族)の請求があった場合は、7日以内に支払わなければなりません。(労基法第23条①) 
  3. 支払時期は、これを過ぎると遅延損害金が発生します。

※遅延損害金の利率は、使用者が法人会社・商人の場合は、商事法定利率として年6%(商法第514条)。使用者が、前記でない場合は、民事法廷利率として年5%(民法第419条①、404条)です。